みほしブログ

趣味は生活と読書。

2016-06-01から1ヶ月間の記事一覧

語り騙られる控えめな「戦争」小説—『冥途あり』長野まゆみ

少年ふたりと犬一匹が夜の学校に忍び込み幻想的な体験をする『少年アリス 』で1988年に文藝賞を受賞し、デビューして27年。本人いわく〈地図でいうと別枠になっている島嶼部のような〉*1ところで執筆活動を続け、長らく文学賞と無縁だった長野まゆみが『冥途…

完全な反復は存在しない―『夜、僕らは輪になって歩く』ダニエル・アラルコン著、藤井光訳

「演じる」という行為は舞台の上に立つ俳優だけが行うものではない。ひとたび人と関わりを持てばそこに何らかの演技が入り込む。母と息子、兄と弟、師匠と弟子、それに恋人同士。それらの役柄にふさわしい行為を繰り返すことにより人間の関係性は保たれると…

セブンイレブンにレジが2台ある理由

このあいだの夜、冷蔵庫の飲み物をすべて切らして、珍しく夜中にすぐ近くのセブンイレブンへ出かけた。深夜0時を過ぎているというのに、店内はなんとなくざわざわしている。なんだろう?とのぞくと、レジのカウンターのなかにスーツ姿の男性がふたり、難し…

繰り返されるほどぼやけていく「小学生」小説—『学校の近くの家』青木淳悟

小学生ってとても不自由だ。小学校は基本的に住む場所から行く学校が勝手に決められてしまい選択肢はないし、友達も大半はその学校のなかで選ばざるを得ないし、家族はそれ以上に選ぶ余地がない。カネもなければアシもせいぜい自転車くらい。それなのに高学…